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現代の名工に鳥居清長の版画を下絵に七宝額絵を作ってもらいました。


銅板に下地白釉処理をします



鳥居清長
美南見十二候
下絵を写し取ります

下絵に沿って銀の植線を付けていきます。
ここが有線七宝の一番の技のみせどころ!
絵で描くのと違い 正確に植線を曲げて輪郭を形作っていくのは至難の業です。
本作は、高低差のある2種類の銀植線を使った忍び線(沈み植線)と銀張りの技法も使っています。

線付けの完成です。
銅板と言ってもふくらみのある面ですので、意外にも長い一本線のほうがより難易度の高い技術となります
一部、無線植線の技法で、「描き」と呼ばれる釉差しを先にしておきます(帯、襟柄の部分)

次は、釉差しですが、釉薬は絵具と違い混ぜて中間色を描くことはできませんので、グラデーション表現一つでも何段階かの色の濃淡をつけた釉薬を作っておき差していきます。

そのため、同色系だけでも大変多くの釉薬を作っておかねばなりません。
昔は、釉薬ガラスも自前で作っていたため、同じ赤色でも窯元によって色が違ったそうです。
由緒ある窯元には、それら貴重な釉薬が引き継がれています。

陶磁器の釉薬と違い、ガラス釉薬は色が変わりませんので出来上がりがイメージしやすいというメリットもあります。
偶然性の伴う陶磁器と違って、七宝は必然的に良いものが出来上がっていきます。

さて、焼きに入ります。
これも陶磁器と違い、ガラス釉薬は700-800度と低い温度で、しかも10分程度の短時間で電気炉焼成可能です。
ただ、短時間だけに、あがりのタイミング他に神経を使う緊張の一瞬です。


反面、焼成するとガラス釉薬の水が抜け体積が減りますので、表面が沈みます。
このため、何度も釉差しと焼成を繰り返し、表面が植線高を超えるまで焼き上げます。
最終段階で、フリッターと呼ばれる透明釉を全体にかけて焼き上げます。



全体的に美しい透明釉によって覆われ、完成に近い絵となってきました

いよいよ最終工程の研磨です。
昔は、天草砥石や朴墨、重曹などを使ったそうですが、現代は粗いものから細かいものまで砥石ベルトが揃っています。


ついに、完成です‼
つるつるピカピカに輝く表面には、角度を変えると銀植線が美しく光りますが、本作には忍び線技法が 使われていますので、表面まで露出研磨されている銀植線と、目を凝らさないと見えない沈み込んだ植線があります。この技法により版画でも難しい髪の生え際がとても美しく表現されています。
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